【マーケティング担当必読】 参考になる国内/海外のIoT成功事例10選
その他 2015.05.25
これだけ話題のバズワードですから、
“IoTについて調査し自社のサービスへの落とし込みを検討する”
という流れはマーケティングの担当者であれば誰しも訪れるタイミングだと思います。
とは言え「IoTって言うけど、まだ先の話だ。」「成功事例が少ないな。」と言う印象をお持ちかもしれません。
そもそも「モノのインターネット」(Internet of Things:IoT)という概念は古くからあるもので、近年オープンソースハードウェア領域において開発コストの低減や無線高速通信網の普及などにより開発が容易になったことにより、企業から個人まで世界中の人びとがIoTの領域に参入しやすい環境が整いましたという状態を指しています。
そのため実際には過去からこの分野を視野に入れ、現在成功しているサービスや企業は多く存在しています。
このムーブメントにより世界がどのように変わるかについては、以下の書籍が大変参考になりますのでオススメです。
IoTの本質を捉えた上で、膨大なデータを収集したり、機器と機器を繋いだり、それらを正しく活用することで、これまでのサービスを一変させることが出来るのです。
今回は国内・海外問わずIoTを活用して成功している(長く利用されている、継続的にサービス提供されていくと想定される)サービスを厳選してピックアップし、まとめました。
目次
【1】 スマートホーム Google Nest
Googleが2014年1月に約3,200億円で買収したNest社はもともと家庭のサーモスタット(温度調整)をユーザーの行動パターンを学習して、自動制御したり、スマートフォンから遠隔で制御できるスマートデバイスを開発、販売していました。
Nest社のスマートサーモスタットは$249で月間10万個販売*されていると評価されています。さらにオースティン電力との提携によりを、Nest社は端末の販売を強化し、オースティン電力はNest社のスマートサーモスタットの利用により夏のピーク時の電力消費を軽減し、1,000億円単位の電力削減効果を得られるとされています。
Googleは2014年6月にスマートサーモスタットNestをハブとするホームオートメーション・プラットフォームを発表し、スマートホームという次世代の市場にもプラットフォーマーとして影響力を行使できるような戦略を展開しています。
*[SOURCE] Morgan Stanley調べ
【2】Philips Lighting
家電メーカーのPhilipsはLighting as a Service(LaaS)をデロイト アムステルダム支社ビルやワシントンDCの駐車場に導入しています。
デロイト アムステルダム支社ビルでは、6,500個のLED照明すべてがIPアドレスと5つのセンサーを持ち、“Ethernetのみ”に接続されているー“Power Over Ethernet”を採用することで、日中の明るさの自動調節、人感センサーによる照明エリアの調整、温度、湿度、CO2、熱量を測定できえう“ビル管理システム”を提供しています。
このビル管理システムを導入することで、70%のコスト削減を可能にします。
またセンサー付きLED照明のコストは数年以内に10ドル程度になると予想されています。
また、ワシントンDCの25カ所の駐車場にも同様のLED照明システムを1万3000個導入することで、68%の電力削減効果を予定しています。
【3】フィットネス向けウェアラブル Fit Bit
日本でも有名なフィットネス向けウェアラブルFitbit(フィットビット)は
これまでに累計2千万ユニットを販売し、2014年の米国フィットネス・ウェアラブル市場でのマーケットシェアは68%となり、圧倒的なリーディングカンパニーと言えます。
米国時間2015年5月7日にニューヨーク証券取引所への上場に向け、新規株式公開(IPO)の申請を行いました。調達予定額は1億ドル。
FitBitは7種類の機器(Zip、One、Flex、Charge、ChargeHR、Surge、Aria)を販売・製造しており、歩数、カロリー消費量、歩行距離、階段を上った数、運動をした時間、心拍数、睡眠量などをトラッキングできます。
2014年度の売上高は7億4540万ドルとなり、販売を開始した2011年度の1,450万ドルから比較すると約51倍と売上高が急増しており、既に黒字化しています。
日本のソフトバンクが5.6%の株式を保有しています。
【4】 スマートウォッチ Apple Watch
Google Android Wear搭載スマートウォッチから遅れること約10ヶ月、2015年4月24日に満を持してAppleから発売されたスマートウォッチ「Apple Watch」。
2014年のAndroid Wear搭載スマートウォッチの想定販売台数は72万台とされる中、Apple Watchは発売前の予約台数のみで200~300万台とも言われており、J.P Morganのアナリストは2015年末までに2,630万台に達すると予測しています。
これまで世界中で様々なスマートウォッチが販売されてきましたが、その中でもApple Watchは圧倒的に売れているスマートウォッチと言えます。
Apple Watchがキャズムを超えて、アーリーマジョリティにまで浸透し、iPhoneやiPadのような存在になれるのか注視したいところです。
【5】ディズニーワールドのリストバンド「MagicBand」
日常的に使用するのではなく、テーマパークなどの特定のエリアで使用するウェアラブルデバイスとして、米ディズニーワールドで2014年に導入されたRFIDリストバンド「MagicBand」をご紹介します。
「MagicBand」はRFIDタグ付のゴム製リストバンドで、事前に申し込みをすると自宅に郵送されてきます。
また、事前申し込み時にMy Disney Experienceサイトでバンドの色や、刻印される名前をカスタマイズすることも可能です。
パークへの入園、アトラクション、食事、ショッピング、リゾート内のホテル宿泊、ホテルのルームキー、ファストパスのチェックなどのパーク内でお金を使うことは全てこの「MagicBand」で済むようになっています。
「MagicBand」はMy Disney Experienceサイトに登録されている個人情報と紐づいて使用されるため、単に利用者の利便性の向上のみならず、キャストやキャラクターが「●●ちゃん、誕生日おめでとう!」などのディズニーならではのサプライズ演出なども可能になります。
また、園内でのすべての行動パターンが「MagicBand」経由でビッグデータとして収集できるため、マーケティングにも活用できます。
【6】スマートシティ バルセロナ市(スペイン)
バルセロナでは毎年Mobile World Congressを開催し、Mobile通信技術の情報発信地として有名ですが、バルセロナ市自体も最先端のスマートシティ化が進んでいることはあまり知られていません。
バルセロナ市はMicrosoft社と連携して、市内全域をカバーするWi-Fiで接続されたスマートパーキングメーターを導入することにより、駐車可能スペースの空き状況をリアルタイムで提供し、その駐車料金はスマートフォンで支払うことが可能です。
また、バス停では、タッチパネルでバス運行のリアルタイム情報が得られたり、市内全域に配置されたセンサーネットワークで計測した気温、大気質、騒音レベル、通行状況などに関する情報なども市民がいつでも見られるようになっています。
【7】ドローン(無人航空機)Parrot クァッドコプター
個人でも簡単に空撮が可能になるドローンに関するニュース(良くないニュースではありますが)が日本でも最近増えてきましたので、一般消費者にもある程度認知されつつあるかと思います。
現在は個人の高価なおもちゃと思われている方も多いと思いますが、商用でも活発に利用されています。例えば、今までは大規模な測量には、大きなコストと何日も時間をかけてヘリや小型飛行機などによる航空写真測量や航空レーザー測量が主流でしたが、ドローンを活用して測量を行うことで、コストをかけることなく、短期間で航空測量が可能になっています。
また、Amazonはドローンを活用して、商品注文後30分で商品を配送する「Prime Air」というサービスを2015年に開始することを目指しています。
仏Pattot社はそのドローンのリーディングメーカーになります。
Pattotの2015年第一四半期のドローンの売上高は前年同期比の356%増で、そのうち消費者向けドローンのみに絞ると483%増の3460万ユーロと急激な売上増加となっています。
【8】スマートアグリカルチャー John Deere Field Connectシステム
農業機械メーカーの米Deere & Company社が提供するJohn Deere Field Connectシステムは大規模農家向けに、気温、土壌の温度、土壌の湿気(水分量)、風速、湿度、日射量などのデータを収集し、Webで閲覧できるシステムです。
システムを利用する各農家から集められたデータは、ビッグデータとして蓄積され、将来的には水を与える最適なタイミングや気温、日射量が作物ごとにわかるようになります。
これらのセンサーネットワークにより、もし世界中の農業を最適化できるようになれば、農業革命と言えるだけのインパクトを与える可能性があります。
【9】スマートカー Tesla、Google、Apple
IT業界から自動車業界への進出が盛んにおこなわれており、
PayPal創業者のイーロン・マスク率いるTesla Motorsの電気自動車(EV)は車載システム(3年前に外苑前のショールームで聞いたときはAndroidベースの車載システムだったと記憶しています)を搭載しており、常時ネット接続する自動運転機能を持つスマートカ―で既存の自動車業界に変革をもたらそうとしています。
また、Googleは自動運転車の開発だけでなく、車載スマートシステム「Android Auto」を正式リリースし、自動車メーカー各社がパートナー企業に名乗りを上げています。
AppleもGoogleと同様に車載スマートシステム「CarPlay」を発表し、また電気自動車開発プロジェクト「Titan」が進められていると報道されるなど、自動車業界にもOS、プラットフォームとしての地位を築こうと熾烈な争いを繰り広げています。
【10】オープンソースハードウェア Arduino
これまでご紹介してきたように大企業から、FitBitなどのスタートアップまで、次世代の大きな潮流であるIoTには幅広いプレーヤーが存在していますが、その背景にはハードウェアのオープン化により、プロトタイプを数年前に比べると驚くほど、安価に開発できるようになったということが少なからず影響しているのではないかと考えられます。
マイクロコントローラーArduino(アルドゥイーノ)はハードウェアのプロトタイビングが簡単にできる、オープンソースハードウェアで、デベロッパーコミュニティの形成やオープンソースで作られた互換基盤、周辺の各種センサーモジュールなどが充実しており、IoTのサービスアイデアがあれば、Arduinoを活用して安価にスピーディーにハードウェアを試作することができます。
Arduinoを活用することで、ロボットやドローン、IoT機器などのフィジカルコンピューティングが可能になります。
Arduinoはたった5人のチームで公式のArduinoボードだけでも2013年には70万台販売(互換機やクローンも含めると倍以上と想定される)しており、もっとも成功したオープンソース・ハードウェアと言えます。
今回は筆者が成功していると思われるサービスを紹介しましたが、IoTの世界はまだまだこれからで、現在は有用なものも無用なものも含めて、様々なIoTサービスが日々生まれている黎明期と言えます。
IoTのサービスはこれから2~3年で淘汰されていき、既存の業界をディスラプトする本当に便利なサービスのみが生き残り、市場を形成し、その市場にはiOSやAndroidのようなプラットフォームが形成され、プラットフォーム上で多くの企業のビジネスが成立する世界が誕生することが想像されます。
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