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STPマーケティングとは?やり方と重要なポイント

マーケティング 2025.06.27

STPマーケティングとは?やり方と重要なポイント

STPマーケティングは、マーケティング戦略の立案において、基本でありながら非常に重要な分析手法です。

市場の顧客を理解し、競合との差別化を図るために、「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の3つのステップを踏むこのフレームワークは、顧客起点で戦略を設計するうえで不可欠です。

「商品やサービスをどの顧客に、どのような価値で、どんな立ち位置で提供すべきか」こうした悩みを抱えるマーケターにとって、STPマーケティングはその答えを導き出す最初のステップになります。

STPマーケティングとは?

STPマーケティングは、以下の3つの視点から市場を分析・分類し、自社の戦略を最適化する考え方です。

  • Segmentation(セグメンテーション):市場を細かく分類すること
  • Targeting(ターゲティング):狙うべき顧客層を選定すること
  • Positioning(ポジショニング):競合との差別化を明確にし、自社の立ち位置を明確にすること

この3ステップによって、無駄のないアプローチを設計し、限られたリソースで最大の効果を得ることが可能になります。

STPマーケティングの3つのステップを解説する図

STPマーケティングの3つのステップ

 

STP:3つの言葉の頭文字

ここでは、STPマーケティングの3要素をもう少し詳しく見ていきましょう。

セグメンテーションとは、市場全体を属性や価値観、行動などに基づいて分類することです。
性別や年齢、地域などの人口動態的な特徴だけでなく、ライフスタイルや趣味・嗜好といった心理的な側面、あるいは購買行動や使用状況といった行動的側面も含めて、さまざまな視点から市場を分割します。これにより、同じ商品でも異なる切り口でアプローチすることが可能になります。

ターゲティングは、セグメンテーションで分類された市場の中から、自社が優位に立てる、あるいはリソースを集中すべきセグメントを選定する段階です。
市場の規模、成長性、競合の強さ、到達可能性などを踏まえて、戦略的に最適なターゲットを決定します。

ポジショニングは、選ばれたターゲットに対して、自社の商品やサービスがどのように価値を提供するかを明確にし、競合と異なる立ち位置を築くことです。
顧客の頭の中に「〇〇といえばこのブランド」とイメージしてもらうような印象づけが重要であり、価格、機能、デザイン、ブランドイメージなど、さまざまな要素が絡み合って形成されます。

この3つの要素は、それぞれ独立して機能するのではなく、互いに密接に連動しています。顧客理解を深めながら、それぞれの分析を繰り返し行うことで、より精度の高いマーケティング戦略の立案が可能になります。

STPマーケティングを行う目的

STPマーケティングを実施することで、企業は市場理解を深め、リソースの無駄を減らし、効果的なアプローチを設計することが可能になります。ここでは、STPマーケティングの主な目的を以下の3つの観点から解説します。

市場の顧客ニーズの把握

STPマーケティングでは、市場を細かくセグメントに分割することで、それぞれのセグメントが持つ特有のニーズや課題を明らかにします。

例えば、同じ商品であっても、都市部と地方、若年層と高齢者層ではニーズが大きく異なります。こうした違いを可視化することで、より的確な製品開発やコミュニケーションが可能になります。

優位を取れるターゲット市場の選択

セグメンテーションによって把握した市場の中から、自社の強みが最も活かせるターゲット層を選ぶことが重要です。

適切なターゲティングを行うことで、効果的なアプローチ方法を設計でき、限られたリソースでも高い成果を上げることが可能になります。また、競合が少ない市場を狙うことで、競争を回避しながらシェアを拡大する戦略も立てられます。

自社商品の差別化ポイントの特定

ターゲット市場が決まったら、次は自社商品の「選ばれる理由」を明確にする必要があります。

STPマーケティングでは、自社が顧客に提供できる価値を見極め、それを軸に競合との差別化ポイントを特定します。例えば、機能性やコストパフォーマンス、ブランドの信頼性といった要素が挙げられます。このプロセスによって、顧客に対して強い印象を残しやすくなり、選ばれるブランドへと成長していくことが期待できます。

差別化を明確にするイメージ

 

S:セグメンテーションの分析手法

セグメンテーションは、STPマーケティングの出発点です。ここでは、自社の商品やサービスが提供される市場をより理解するために、顧客をさまざまな基準で分類します。これにより、マーケティング活動の対象となるセグメントが明確になり、個々のニーズに合わせた訴求が可能になります。

セグメンテーションには複数のアプローチがあり、主に消費財市場と生産財市場で分類方法が異なります。また、各セグメントの有効性を分析するための指標として「6Rの原則」も活用されます。

消費財市場:一般で消費される財の市場分類

消費財市場におけるセグメンテーションでは、次の4つの変数を活用して分類します。

  • 地理的変数:地域、気候、都市部/地方などの居住環境によって分類します。例えば、寒冷地域では防寒性の高い衣類や暖房器具のニーズが高まります。
  • 人口動態変数:年齢、性別、職業、収入、家族構成などが含まれます。例えば、子育て世代向けの商品とシニア層向けの商品ではニーズが異なります。
  • 心理的変数:ライフスタイル、性格、価値観などの心理面から分類します。環境意識が高い層向けの商品や、自己実現を重視する層への訴求などが該当します。
  • 行動変数:購買頻度、ブランドへのロイヤルティ、使用状況など行動パターンに基づいて分類します。例えば、リピーター向けの特典や新規顧客向けキャンペーンなどがあります。

これらの変数を組み合わせることで、より精緻な市場の全体像を把握することが可能になります。

生産財市場:生産材料の市場分類

BtoB(企業間取引)における生産財市場では、以下のような軸に基づいて企業や業界を分類します。

  • 人口軸:業種、企業規模、所在地などに基づいて分類します。例えば、製造業とサービス業では必要とする資材やシステムが大きく異なります。
  • オペレーティング軸:技術や使用プロセス、顧客の導入環境などに注目します。例えば、高精度な工作機械を必要とする企業と、汎用設備を求める企業ではニーズが異なります。
  • 購買アプローチ軸:意思決定のプロセスや購買方針に注目します。例えば、購買部門主導型の企業と、各部署が裁量を持っている企業ではアプローチ手法が変わります。
  • 状況要因軸:納期、導入の緊急性、季節性などの状況に基づいて分類します。災害復旧やシステム障害など、緊急対応が求められる状況では異なる提案が必要になります。

このように、生産財市場では取引規模や業務特性に応じた柔軟な分類が求められます。

6Rの原則:各セグメントの有効性を分析

セグメントを定義しただけでは、すぐにマーケティング活動に移ることはできません。定義された各セグメントが実際にマーケティングの対象として有効かどうかを判断するためには、「6Rの原則」による評価が重要です。

  1. Realistic scale(有効な規模):十分な売上や利益が見込める市場規模があるか。
  2. Rank(優先順位):自社にとって戦略的に優先すべき市場かどうか。
  3. Rate of growth(成長率):将来的な成長性があるかどうか。
  4. Rival(競合):競合他社の強さや数による参入障壁の有無。
  5. Reach(到達可能性):実際に広告や営業活動でリーチできるか。
  6. Response(測定可能性):施策に対する反応を計測できるか。

これらの基準を満たしているセグメントを選定することで、より精度の高いターゲティングとポジショニングが可能になります。

6Rの原則を評価するイメージ

 

T:ターゲティングの分析手法

ターゲティングは、セグメンテーションによって分類された市場の中から、自社が注力すべき顧客層を選定するプロセスです。ターゲットの選定によって、マーケティング活動の効率性や効果は大きく左右されます。顧客ニーズとの一致度や競合状況、収益性などを踏まえながら、どの市場を狙うかを戦略的に判断する必要があります。

ターゲティングのアプローチには主に以下の3つのタイプがあり、それぞれに適した市場環境やビジネスモデルがあります。

集中型マーケティング:セグメントを絞りアプローチ

集中型マーケティングは、特定の市場セグメントに絞ってアプローチを行う戦略です。リソースが限られている企業や、特定のニッチ市場での優位性を活かしたい場合に有効です。この戦略では、対象となる顧客に深く入り込み、商品やサービスを最適化して提供することで、高いブランドロイヤルティやリピート率が期待できます。

例えば、高級時計ブランドが富裕層をターゲットに商品を展開するように、ターゲットを明確に絞ることで、メッセージや提供価値を特化させることが可能です。一方で、ターゲット市場の変化に大きな影響を受けやすい点には注意が必要です。

差別型マーケティング:複数のセグメントにアプローチ

差別型マーケティングは、複数の市場セグメントをターゲットにし、それぞれに適した製品やサービスを提供する戦略です。多様な顧客層に対応できるため、売上拡大やリスク分散が図れます。

例えば、自動車メーカーがファミリー向けミニバンと若年層向けのスポーツカーをそれぞれ開発・販売するように、各セグメントに最適な商品を提供することで、異なるニーズに対応できます。この戦略では、セグメントごとにマーケティング施策やプロダクト開発が必要になるため、コストや労力は増加しますが、その分、広範囲な市場を獲得できる可能性があります。

無差別型マーケティング:セグメントに関係なくアプローチ

無差別型マーケティングは、市場を細分化せず、すべての消費者に同じ製品やサービスを提供する戦略です。多くの消費者に広く訴求することを目的とするため、製品ラインやマーケティングメッセージの統一が可能で、規模の経済を活かした大量生産・大量販売が実現できます。

例えば、基本的な日用品や公共料金のように、誰にとっても必要である製品・サービスでは、この戦略が適しています。一方で、顧客ニーズの多様化が進む現代においては、差別化が難しく、価格競争に陥りやすいリスクも伴います。

このように、ターゲティングにはそれぞれの市場状況や企業資源に応じた適切な戦略の選択が求められます。選んだターゲットが、後のポジショニングに大きな影響を与えることも意識しながら進めましょう。

P:ポジショニングの分析手法

ポジショニングは、ターゲット市場において自社の商品やサービスがどのような立ち位置を取るかを明確にするプロセスです。顧客の頭の中に「このブランドは〇〇のイメージ」と認識されることがゴールです。そのためには、競合との違いを明確にし、顧客にとっての価値を際立たせる必要があります。

ポジショニング戦略を設計する際に役立つ手法として、ポジショニングマップの作成があります。

ポジショニングマップの作成:市場内の立ち位置を可視化

ポジショニングマップは、縦軸と横軸に市場で重要とされる2つの要素(例:価格と品質、性能とデザイン性など)を取り、その中に自社と競合他社の立ち位置をプロットする図です。これによって、競合と比較した自社のポジションが視覚的に理解でき、空いている市場の隙間(=ポジショニングチャンス)を発見する手がかりにもなります。

例えば、ある市場で「高価格・高品質」ゾーンに競合が集中している場合、「低価格・高品質」などの未開拓領域にポジショニングを構築することで、差別化が可能になるかもしれません。

この分析を行うには、まずターゲット市場の調査を通じて顧客が重視している要素を特定し、それに基づいた評価軸を設定します。そのうえで、競合他社の位置づけを調べ、自社がどのようにポジションを取れば顧客の頭の中に強く印象づけられるかを検討します。

ポジショニングは、単に製品の特徴を伝えるだけではなく、「なぜこの商品があなたにとって価値があるのか」を明確に伝えることが重要です。そのためには、コミュニケーションの一貫性やブランドストーリーの整合性も求められます。

効果的なポジショニングは、ブランドイメージの強化だけでなく、顧客の購買決定にも大きな影響を与えるため、STPマーケティング全体の成否を左右する重要な要素といえるでしょう。

ポジショニングマップを作成するイメージ

 

STP分析の注意点

STP分析は非常に有効なマーケティング手法ですが、いくつか注意すべきポイントがあります。ここでは、STP分析を効果的に活用するために押さえておくべき重要な視点を4つ紹介します。

行うタイミング:環境分析の後

STP分析を行う最適なタイミングは、外部・内部環境分析を終えた後です。PEST分析や3C分析、SWOT分析などで市場環境や自社の立ち位置を把握し、全体戦略の方向性を固めたうえで、STPによる市場選定とポジショニングに入るのが基本的な流れです。

環境分析によって明らかになった機会や脅威、自社の強み・弱みを踏まえたうえでSTP分析を行うことで、より戦略的かつ実効性の高いマーケティング計画を立てることができます。

多角的な視点からの検討:他の分析を考慮する

STP分析は単独で使うのではなく、他のマーケティングフレームワークと連携して活用することで真価を発揮します。前述の環境分析に加え、マーケティングミックス(4P:Product、Price、Place、Promotion)とSTPは密接に関連しています。

例えば、ターゲットとする市場が決まれば、それに応じた製品設計や価格戦略、流通チャネル、プロモーション戦略も連動して設計する必要があります。STP分析は、こうした総合的なマーケティング活動の起点となる設計図といえるでしょう。

市場規模、成長率をチェック

STP分析の結果として魅力的に見えるポジションがあっても、それが本当に狙うべき市場かどうかを見極める必要があります。市場の規模が小さすぎたり、成長性が乏しかったりする場合、初期のうちは効果があっても中長期的な成長が見込めないことがあります。競合が少ない市場でも、実は市場全体が縮小傾向にあるといったケースもあるため、ポジションの魅力だけでなく、市場そのものの将来性も冷静に評価することが重要です。

STPは柔軟に設計できる

STPは「Segmentation → Targeting → Positioning」という順序で説明されることが多いですが、実際の戦略設計ではこの順番にこだわる必要はありません。例えば、まずポジショニングから考えて、そのポジションを実現できるターゲットやセグメントを逆算して設計するというアプローチも可能です。3つの要素は相互に関連し合っており、どこからスタートしても本質的な価値は変わりません。柔軟な発想で自社の状況に合わせたアプローチをとることが、成功への近道になります。

STPマーケティングの活用で、自社の強みを最大化しよう

STPマーケティングは、「誰に」「どんな価値を」「どのように伝えるか」を戦略的に整理し、顧客ニーズと競合状況に最適化されたアプローチを実現するためのフレームワークです。市場の変化が激しい今だからこそ、顧客起点の思考と柔軟な戦略設計が求められています。

自社の商品やサービスを“選ばれる存在”にするために、STPマーケティングの考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。

「自社に合ったSTP戦略を設計したい」「現状のポジショニングを見直したい」などのお悩みがあれば、貴社の状況に応じたご提案をいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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