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ウェブサービスの「ユーザビリティ(使いやすさ)を分析」するために必要な3つの方法
UI/UXデザイン 2017.09.13
前回の記事では、「ユーザビリティ」とは何か、その定義を紹介しました。
ウェブユーザビリティとは何か?UIとUXとユーザビリティの関係性について
第2回目の今回は、ウェブユーザビリティをどのように分析すればいいのか、その分析方法を紹介したいと思います。
目次
1|ウェブユーザビリティの分析とは
ウェブサイトの分析と聞いてまず思い浮かべるのはアクセス解析等のデータ分析ではないでしょうか。大多数のウェブサービス運営者は、グーグルアナリティクス等のツールを活用してアクセス解析を実施し、サイトの状態を把握していると思います。
データ分析をすると、サイトのどこに問題がありそうなのか、おおよその見当をつけられる場合があると思います。例えば、会員登録フローの特定のページの離脱率が高いとすれば、そのページに何らかの問題がありそうだなと推測できます。しかし、そのページがなぜ問題なのか、問題の理由まではデータ分析で知ることはできません。
ウェブユーザビリティ分析は、その名の通りウェブサイトのユーザビリティを分析することですが、ユーザビリティ上どこに問題があるのかだけではなく、なぜ問題なのか、その「理由」まで把握することができるのが特徴です。
2|ウェブユーザビリティの分析にはどんな方法がある?
ウェブユーザビリティの分析は定性的な分析です。実際にサイトを使い、それを質的に分析します。サイトそのものと、それを使うユーザーの行動や感情を観察・想定することで、ユーザビリティ上の問題を明らかにしていきます。
ウェブユーザビリティの分析は、ユーザビリティ専門家の視点で分析する方法と、実ユーザーの視点で分析する方法の2種類に大別することができます。
具体的には、主に以下の分析方法があります。
- ヒューリスティック分析(ユーザビリティ専門家の視点で行う分析)
- 認知的ウォークスルー(ユーザビリティ専門家の視点で行う分析)
- ユーザビリティテスト(ユーザーの視点から行う分析)
以下に、それぞれの分析方法を紹介していきます。
2-1|ヒューリスティック分析
ヒューリスティック分析は、ウェブユーザビリティの専門家が、分析対象のサイトを実際に目で見て、そのユーザビリティ上の問題点を見つけていく分析方法です。
「ヒューリスティック」とは「経験則」という意味です。ウェブユーザビリティ専門家のこれまでの経験則に基づく洞察力によってサイトのユーザビリティを分析していく手法がヒューリスティック分析です。
もともとはウェブユーザビリティ研究の第一人者であるヤコブ・ニールセンが「ヒューリスティック評価法」として考案した手法で、その中で「ユーザビリティに関する10のヒューリスティック」(Ten Usability Heuristics)として10項目の評価原則が挙げられています。厳密には、この10項目を用いた分析がヒューリスティック分析であるとされることもありますが、実際にはこの10項目だけに基づいて具体的にユーザビリティを分析することは現実的ではないとも言われます。
そのため、ヒューリスティック分析は、ウェブユーザビリティ専門家の経験則に基づいてあらかじめ設定されたチェック項目(分析指標)を用いたユーザビリティの分析方法である、と広く解釈するのが一般的です。
ヒューリスティック分析は、経験豊富で洞察力のあるウェブユーザビリティの専門家が、分析対象のサイトを見ながらチェック項目に照らして分析を行うため、的を射た信頼性の高い分析結果が期待できるという特徴があります。
また分析実施者のみで分析を完結することができるため、ある程度効率的に短期間で行うことができ、コストもある程度低く抑えることが可能です(もちろん分析対象範囲の大小などの条件に応じて期間・コストも変わってきますが)。
一方で、分析者の経験量や熟練度に依存する部分があり、それによっては分析結果が変わってくる可能性があること、またチェック項目に照らした分析であるとはいえ、分析者の主観に左右される可能性があることなどの短所もあります。
こうした短所は、数人の分析者で同時並行して分析を実施することで客観性を増し、分析実施者の間でレビュープロセスを設けることで分析結果の偏りを補正することによって回避することが可能です。
尚、パンタグラフではヒューリスティック分析サービスを提供しており、これまで数多くのサイトのウェブユーザビリティを分析してきました。経験豊富なスペシャリストが分析を担当していますので、ご興味があれば是非お問い合わせください。
2-2|認知的ウォークスルー
認知的ウォークスルーは、ヒューリスティック分析と同様、専門家視点の分析方法です。ウェブユーザビリティの専門家が、分析対象のサイトを実際に目で見て、そのユーザビリティ上の問題点を見つけていくという点も同様です。
先ほど紹介したとおり、ヒューリスティック分析では、あらかじめ設定されたチェック項目に照らしてサイトのユーザビリティを分析しますが、認知的ウォークスルーでは、ウェブユーザビリティの専門家が想定ユーザーになりきって、ユーザーの思考過程をシミュレーションしながらサイトを実際に利用・操作することでユーザビリティを分析します。
“想定ユーザーになりきる”ということがひとつの重要なポイントになりますので、分析対象サイトのターゲットユーザーがどんな人で、どんなニーズや目的、期待をもってサイトを訪れるかということを、分析実施前に十分に知っておく必要があります。
そして、ユーザーがそのニーズや目的を達成するためにどのように行動するのか、目的達成のための行動シナリオを想定します。例えばECサイトで何らかの商品を購入したいという目的だとすれば、サイトを訪れて、目的の商品を検索し、その商品の詳細を確認して、商品をカートに入れ、必要事項を入力して決済する、という流れを予め行動シナリオとして定めます。
シナリオを定めたら、そのシナリオに沿って順を追ってサイトを実際に利用・操作していきます。利用・操作の流れの中で、想定ユーザーがどのように思考をめぐらし、どのような感情を持つかをシミュレーションしながら、ユーザーがつまずきそうな箇所、ユーザーの期待に沿わない箇所を分析者の経験則と知見に基づいて発見していくことでユーザビリティを分析します。
ヒューリスティック分析同様、経験豊富で洞察力のあるウェブユーザビリティの専門家が分析を行うため、高い信頼性をもった分析結果が期待できます。また、その長所、短所もヒューリスティック分析と同様となります。
パンタグラフではヒューリスティック分析サービスを提供していると先ほどお伝えしましたが、パンタグラフのヒューリスティック分析は、同時に認知的ウォークスルーの手法も併用して行っています。この両手法は分析方法の定義としては切り分けることができますが、ユーザビリティ専門家の視点で実際に分析する際には定義上の違いはさほど重要ではないと考えているからです。専門家によるユーザビリティ分析の網羅性を高めたいという思いから、両手法を併用しています。
2-3|ユーザビリティテスト(ユーザーテスト)
ヒューリスティック分析、認知的ウォークスルーがウェブユーザビリティ専門家の視点による分析なのに対し、ユーザビリティテストはユーザー視点による分析になります。
ユーザビリティテスト(またはユーザーテスト)に関しては、広く認知もされているのでご存じの方も多いのではないでしょうか。ユーザビリティテストは、テストユーザーに分析対象のサイトを実際に使ってもらい、その行動を観察することでユーザビリティ上の問題点を発見する分析手法です。
ユーザビリティテストでは、ペルソナ作成やカスタマージャーニー分析等によって、まずサイトのユーザー像を明確化・具体化し、そのユーザーがサイトをどのように使うのか、サイト内でのあるべきユーザー行動の仮説を立てます。そして、その仮説を検証するために実際にテストユーザーに実施してもらうテストシナリオを設計します。
テストの実施段階では、通常テストユーザーに考えていることを話してもらいながらテストシナリオを実施してもらいます(思考発話法)。そして、ユーザーがテストシナリオを遂行できるかどうか、サイトを使っていく中でつまずいたり戸惑ったりする部分はないかを観察し、当初の仮説と合わないユーザビリティ上の問題点を発見していきます。
このように、ユーザビリティテストは仮説検証型の分析方法です。そのため、事前の仮説設定を含めたテスト設計の良し悪しが、テストの成果を大きく左右します。そもそものユーザー像、ユーザーのあるべきサイト内行動が間違っていないか、採用するテストユーザーが適切か、テストシナリオは正しく仮説検証でき得るものになっているか、これら事前のテスト設計が、ユーザビリティテストを有意義なものにできるかどうかのポイントになります。
ユーザビリティテストは、観察を通じてサイトのどこに問題があるのかを発見できるだけでなく、思考発話法によってユーザーがサイトを使用している際の心理状態もわかるので、問題の理由や原因も明らかにできるという長所があります。
一方で、テストユーザーを一定数採用する必要があり、またテスト実施のための設備等の手配も必要となるため、どうしてもコスト高になってしまうこと、またそうした制約のためテスト範囲をある程度限定しないといけない、などの短所があります。ただし、最近ではリモートユーザビリティテスト(ネット上で実施可能なユーザビリティテスト)も普及してきており、以前と比べて低コストでの実施も可能となっています。
3|ウェブユーザビリティ分析におけるデータ分析の意義
ここまで、代表的なウェブユーザビリティ分析の方法を紹介してきました。これらの定性的なユーザビリティ分析は、適切な設計のもと、適切な人が適切な手順で実施をすれば、高い信頼性をもった有意義な分析結果を得ることができます。
しかし、分析を通して発見されたユーザビリティ上の各問題が、サイトの成果やKPIに対して実際にどれだけ影響しているのかは、ユーザビリティ分析だけでは見ることができません。ユーザビリティ上問題ではあるものの、商品購入やサイト会員登録などのコンバージョンには大きな影響を及ぼしていない場合もあり得ます。
冒頭でも触れましたが、サイト成果の観点からサイトのどこに問題がありそうなのか、コンバージョンに至る行動プロセスのどこにボトルネックがありそうなのかを客観的に見極めることは、アクセス解析などの定量的なデータ分析が適していると言えます。その意味で、定性的なウェブユーザビリティ分析で発見された問題の重要度を測るためにデータ分析を並行して行うことは非常に有意義です。データ分析によってサイトのどこに問題があるかを把握し、それをユーザビリティ分析の結果と突き合わせることで、問題解決の優先順位をつけることが理想的だと思います。
まとめ
以上、ウェブユーザビリティの分析方法を紹介しました。
ここまで見てきたように、ウェブユーザビリティの分析を行うことでサイトのユーザビリティ上の問題点や課題を発見することができます。
ウェブユーザビリティの分析には、定性的な分析としてウェブユーザビリティ専門家視点での分析とユーザー視点での分析があり、それらを補完する定量的なデータ視点の分析がありますが、これら3視点から全方位的に分析することがいちばん理想的だと言えます。
しかし、ここで紹介した定性的な分析のいずれかだけでも、適切に実施されれば、信頼性の高い分析結果を得ることができ、ウェブユーザビリティ改善のための重要なインプットが期待できます。
サイトに集客できているのに期待した成果がなかなか上がらない、そうした悩みを抱えている場合はユーザビリティ分析を行ってみることをおすすめします。それまで気づかなかった問題がきっと見えてくると思います。
次回は、具体的なウェブユーザビリティ分析の進め方として、ヒューリスティック分析を取り上げて紹介したいと思います。
パンタグラフのユーザビリティ分析
パンタグラフでは、ユーザビリティのスペシャリストによるヒューリスティック分析サービスを提供しています。ユーザビリティ上の問題発見と改善提案により、ウェブユーザビリティの向上をサポートいたします。どうぞお気軽にお問い合わせください。
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