AIが変えたのは、時間じゃなくて自信でした。入社11年目エンジニアのリアル

インタビュー 2026.10.07

AIが変えたのは、時間じゃなくて自信でした。入社11年目エンジニアのリアル

パンタグラフには、2015年10月に入社したエンジニアのナシールさんがいます。役員を除けば、社内で一番長く在籍しているメンバー。日本で働きはじめてからは、約20年になります。社内で唯一の外国籍メンバーでもあります。

今回は、11年でパンタグラフの何が変わったのか、そしてAIが仕事にどんな変化をもたらしたのかを聞いてみました。

同じ会社に11年。でも「同じ仕事」の感覚はない

「同じ会社に11年いても、同じ仕事を11年している感覚はないんです」

今回の取材で、いちばん印象に残ったのがこの一言でした。パンタグラフに入る前は、いくつかの会社を経験してきたナシールさん。以前は、自分の会社が持っている一つのサービスを、長い時間かけて開発・改善していく仕事が中心だったそうです。

「一つのプロダクトを深く理解して、長く改善していく面白さはありました」

一方、パンタグラフは企業から依頼を受けて、その企業のWebサイトやシステムをつくる会社です。クライアントごとにビジネスもサービスも課題も違うので、案件が変わるたびに、業界のことも技術のこともゼロから理解し直す必要があります。 あるプロジェクトではWebサービス、別のプロジェクトではアプリやインフラ、また別のプロジェクトでは触ったことのない新しい技術。

毎回それ、大変じゃないですか?と聞くと、こんな答えが返ってきました。

「同じ仕事をずっとやると、ちょっと、boringじゃないけど……まあ、一番飽きる、みたいな」

なるほど、飽きないから続いている。11年の理由が、あっさり出てきました。

「できません」とは言いたくないんです

ナシールさんには、仕事の上で決めていることがあります。

「私は、最初から『それはできません』『不可能です』と言うのが、あまり好きではありません」

まず課題をよく理解して、なぜ難しいのかを整理して、どうすれば実現できるのかを考える。もちろん、技術的には可能でも、コストが高くなったり、時間がかかったり、公開後の運用が複雑になったりする場合はあります。それでも、最初から可能性を閉じるのは自分の仕事じゃない、と言います。

「『この方法なら実現できますが、コストが高くなります』『こちらの方法なら費用は抑えられますが、いくつか制約があります』というように、メリットもデメリットも含めて説明します。その上で、最終的にどの方法を選ぶかは、クライアントが判断することです」

私の仕事は「できない」と言うことではなく、「どうすればできるか」を考えることだと思っています。

依頼をそのまま受けるのでも、断るのでもなく、選択肢を並べて判断材料を渡す。この進め方が成立するのは、意見を言える環境があるからでもあります。「この方法にはリスクがあります」「技術的にはこちらの方が良いと思います」。もちろん採用されないこともあるけれど、伝えられること自体が大事なんだそうです。

なぜそこまで?と聞いたら、すごく正直な答えが返ってきました。

「自分が言ってることを言えないと、そのまま他の人が言ったことをやると、ちょっと、やる時はなんかイライラしながらやるから」

……わかります。納得しないまま手を動かす時間を、ナシールさんは良しとしないんですね。

インフラ、実は入社してから覚えました

11年のあいだに、会社としてできることも増えました。わかりやすいのがインフラです。

インフラというのは、Webサイトやアプリが動くための土台のこと。サーバーやネットワークをどう組むかを設計して、実際に構築して、公開したあとも動き続けるように運用・保守していく仕事です。ふだん目にする画面の裏側にあって、ここが止まるとサービスそのものが止まってしまう。専門性が高いので、外部の専門会社に任せている制作会社も少なくありません。

パンタグラフも、以前はそうでした。

「以前は、サーバーやインフラの設計・運用について、パートナー会社にお願いする部分が多くありました。でも今は、設計、構築、運用、保守まで、社内で対応できるケースが増えています」

これ、何が変わるのか聞いてみると、まず挙がったのがスピードと柔軟性でした。外部に確認しないと決められない状態だと、判断のたびに待ち時間が発生します。社内で判断できれば、その分だけ早い。しかも、クライアントの事情を理解した上で技術的な提案までできるようになります。

さらに、パートナー会社が設計したものを、パンタグラフ側で確認する場面も出てきました。「本当に要件(クライアントが求めている条件)を満たしているか」「もっと良い方法はないか」「将来的な運用まで考えて問題はないか」といった視点です。

依頼する側から、依頼したものの中身まで技術的に判断できる側へ。 これは、けっこう大きな違いだと思います。

ここまで聞いて、ひとつ気になったので確認してみました。それ、入社したときから全部できたんですか?

「いや。最初、インフラのところは、ほとんどここに来てから学んだ」

——今は全部できるようになってますよね?

「いや、全部できないけど。まあ、一応、一応」

謙遜されましたが、これ、すごいことだと思うんです。パンタグラフでは、案件が少し落ち着いている時期に、新しい技術を調べたり勉強したりする時間を取ることができます。ナシールさんはその時間を使ってインフラを身につけ、結果として、会社が受けられる仕事の幅そのものが広がりました。一人のエンジニアが学んだことが、そのまま会社の提供できる価値になっている。 ご本人もこう言っていました。

「学ぶことが、自分の成長だけでなく、会社のできることを増やすことにつながっています」

AIが変えたのは、時間じゃなくて自信

技術とは別に、ナシールさんが長く向き合ってきたものがあります。日本語です。

「プログラミング言語は世界共通に近いですが、人と仕事をするための言葉はそうではありません」

プログラムを書くための言語は、どの国のエンジニアが見ても同じように読めます。でも、人と仕事を進めるための言葉はそうはいきません。技術的な内容は理解できても、「相手が何を期待しているのか」「この表現は強すぎないか」「言葉にされていない意図は何か」がわからない。

一番難しいのは、温度感なんだそうです。 相手がどこまで満足しているのか。この文面は、実は少し怒っているのか。日本語は同じような書き方でも、そこが読み取りにくい。

しかもこれ、20年経った今も完全には解決していないと言います。

「今でも、非常に丁寧な表現や遠回しな言い方については、考えることがあります」

そしてこの壁は、仕事のやり方そのものを制限していました。

「以前は、日本語の表現に自信がなかったので、クライアントに直接メールやチャットを送ることは、あまりありませんでした。『この日本語で失礼ではないか』『自分の意図が正しく伝わるか』ということが気になっていて」

技術の話はできるのに、それを届ける手前で止まってしまう。以前は、社内の別のメンバーを経由してやりとりすることが多かったそうです。

変わったのは、AIを使いはじめてからでした。まず自分で伝えたい内容を書いて、AIで日本語の表現やトーン、分かりやすさを確認する。その結果、今では一部のクライアントとは、自分から直接やり取りできるようになりました。

ここで語られた変化の中身が、想像していたものと違っていました。

「これは単に、文章を書く時間が短くなったということではありません。AIによって、自分のコミュニケーションに自信を持てるようになったことが、一番大きな変化だと思います」

だからナシールさんは、AIを翻訳ツールだとは思っていません。

「以前なら『日本語がうまく書けないから短くしておこう』『説明するのが難しいから発言しないでおこう』ということもあったと思います。これは単なる翻訳ではなく、自分が持っている考えや知識を、相手に届けるためのサポートだと思っています」

開発の場面でも、コードの別のアプローチを考える、エラーの原因を調べる、仕様を整理する、知らない技術を理解する、といった使い方をしているそうです。「以前ならGoogleで何ページも検索して整理していたことが、AIと会話しながら理解できるようになりました」とのことでした。

それでも、最後は人間が判断する

じゃあ、どこまでAIに任せられるんでしょう。ここは慎重でした。

「AIは、一般的な答えやよくある解決方法を出すのはとても得意です。ただし、AIが出したコードや解決方法が、そのままベストな答えとは限りません」

実際に動かすシステムに使うには、人が必ず中身を確認する必要があります。本当にこの方法が最適か。表示の速さなどに問題は出ないか。セキュリティ上のリスクはないか。何年か使い続けたときに困ることにならないか。見落としている落とし穴はないか。

クライアントの案件だと、さらに技術以外の事情も絡んできます。

「このクライアントは何を一番重視しているのか。このプロジェクトでは、これまで何があったのか。予算やスケジュールはどうか。この会社の運用体制では、どこまで対応できるのか。こういったことまで理解しないと、本当に合った提案はできません」

同じ課題でも、予算や社内の体制が違えば、正解も変わる。そこはAIの外側にある情報です。

「AIはとても優秀なサポートツールですが、最後に必要なのは、人間の経験、理解、レビュー、判断、そして責任だと思っています」

ただ、この線引きが固定されているとも思っていないようです。

「今、私は1年ぐらいChatGPTを使ってるじゃないですか。このクライアントはこの点が気になるタイプだ、とAIに教えれば、それを適応してくれる。AIも、どんどん学んでる。同じ商品だったら、ほとんどAIに任せることができるかもしれない」

任せられる範囲は、これからも広がっていく。それを前提にした上で、今はまだ人間の判断が必要だ、という話でした。

11年、孤独を感じたことはほとんどない

11年続いた理由を、ナシールさんは一つに絞りません。仕事の面白さ、意見を言える環境、学び続けられること。そして最後に、人の話が出てきました。

「パンタグラフのメンバーはとてもフレンドリーで、相談しやすいです。長く働く上では、制度や仕事内容だけではなく、『この人たちと一緒に働きたい』と思える人間関係も、とても大切だと感じています」

社内で唯一の外国籍メンバーであることについては、こう振り返っていました。

「これまで『自分だけ違う』『一人で働いている』というような孤独を感じたことは、ほとんどありません。日本語や文化の違いがあっても、特別に線を引かれるのではなく、チームの一員として接してもらえたことは、私にとってとても大きかったと思います」

「技術は一人でも勉強できますが、会社の文化やコミュニケーションは一人では学べません。周りの人とのやり取りの中で、少しずつ身につけてきました」

11年も働いていると、会社の良いところだけでなく、いろいろな変化や課題も見えてくるはずです。それでも、と最後にこう話してくれました。

「パンタグラフは『完成している会社』というより、働いているメンバーと一緒に変わり続けている会社だと感じています」

「新しいメンバーが入ることで、また会社のできることも広がっていくと思いますし、それを楽しみにしています」

まとめ:ナシールさんの3つの視点

  • 「できない」ではなく「どうすればできるか」を考える
    可能性を最初から閉じない。選択肢とメリット・デメリットを揃えて、判断材料をクライアントに渡す。
  • 学びは、自分だけのものにならない
    入社後に覚えたインフラの知識が、今では会社として提供できる領域になった。個人の成長が、そのまま会社の守備範囲を広げる。
  • AIが変えるのは、時間だけではない
    効率化の先にあるのは「自信」。これまで発揮しきれていなかった力が、相手に届くようになる。

ナシールさんから、これから挑戦する人へ

最初からすべてできる必要はありません。私自身、日本で約20年働いていますが、最初から今のように日本語で仕事ができたわけではないんです。

大切なのは、分からないことがあったときに学ぶこと、新しいことにチャレンジすること、そして周りの人とコミュニケーションを取ること。

特に、外国籍の人や日本語が第一言語ではない人には、「日本語が完璧になってからチャレンジしよう」と思わなくてもいい、と伝えたいです。もちろん、日本語を学ぶ努力は必要です。でも、自分の専門性や考えを持っていて、それを伝えようとする姿勢があれば、周りの人も助けてくれます。今はAIのようなツールもありますから。

パンタグラフでは、Webサイトやアプリの開発から、インフラの設計・構築・運用まで、社内で一貫してご対応しています。AI活用も含めた技術のご相談は、お気軽にお声がけください。

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