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ユーザビリティテストとは?実際のやり方や成功事例もわかりやすく解説

制作/開発 2023.09.01

ユーザビリティテストとは?実際のやり方や成功事例もわかりやすく解説

ユーザーがストレスなく使えるWebサイトを作るにはユーザビリティテストが欠かせません。

この記事では、ユーザビリティテストの概要、実践方法、テストでわかること、成功事例をわかりやすく解説します。

ユーザビリティテストとは?

ユーザビリティテストとは、WebサイトなどのUI/UXに潜むユーザビリティの問題、課題をユーザー視点で評価する手法です。UI/UXについては、「UI/UXとは?意味・違い・ユーザー目線のデザインの重要性を解説!」で詳しく解説しています。

具体的には想定ターゲットに近いペルソナの人に、<Web>サイトの完成品やプロトタイプ(試作モデル)を実際に使ってもらい、その様子を観察することで操作性や使い勝手など、設計通りのユーザビリティが達成できているかを検証するテストです。プロトタイプについて詳しくは「プロトタイプとは? 3つの種類と作成するメリットを解説!」をご覧ください。

このようなテストを実施することで、制作者側では気付かない問題点や改善点を発見できるメリットがあります。

ユーザビリティとは?

ユーザビリティ(usability)とは、「使う(use)」と「能力(ability)」を組み合わせた言葉で、「有用さ」、「使いやすさ」という意味を持ちます。

国際標準機構の国際規格であるISO 9241-11では、ユーザビリティを以下のように定義しています。

特定の使用状況において、システムや製品、サービスが特定のユーザーによって、どの程度まで有効性、効率性、満足度を伴って特定の目的を達成するために使うことができるか

出典:人とシステムの相互作用の人間工学 ISO 9241-11-2018(en), Ergonomics of human-system interaction(英文)

また、ユーザビリティに関する著名な研究者であるヤコブ・ニールセン博士は著書『ユーザビリティエンジニアリング原論』の中で、ユーザビリティは五つの構成要素を持つとしています。

  • 学習しやすさ
    システムは、ユーザーがそれを使って作業をすぐ始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない。
  • 効率性
    システムは、一度ユーザーがそれについて学習すれば、後は高い生産性を上げられるよう、効率的な使用を可能にすべきである。
  • 記憶しやすさ
    システムは、不定期利用のユーザーがしばらく使わなくても、再び使うときに覚え直さないで使えるよう、覚えやすくしなければならない。
  • エラー発生率
    システムはエラー発生率を低くし、ユーザーがシステム使用中にエラーを起こしにくく、もしエラーが発生しても簡単に回復できるようにしなければならない。また、致命的なエラーが起こってはいけない。
  • 主観的満足度
    システムは、ユーザーが個人的に満足できるよう、また好きになるよう、楽しく利用できるようにしなければならない。

出典:ユーザビリティエンジニアリング原論

ユーザビリティテストでは、紹介した5つの要素を満たしているかどうかを確認します。

ユーザーテストとは?

ユーザビリティテストに似た言葉で、ユーザーテストというものがあります。

ユーザーテストとは、ユーザーに商品やサービスを試用してもらい、ユーザーがそれを使いたいか、または欲しいかどうかを調査する目的で実施されるテストです。ユーザビリティテストとは内容が異なるので注意が必要です。

 

ユーザビリティテストには2種類ある

ユーザビリティテストは、定性的なものと定量的なものに大別されます。目的に合わせて、2種類のテストから最適なものを選択します。

定性的データを使ったユーザビリティテスト

定性的データとは、ユーザーがWebサイトなどを使用する様子を直接観察し、操作のなかで発生する迷いやつまずきなどの観察結果をデータにしたものです。

UIにおける課題を洗い出し、改善案を探し出す目的で用いられるテスト手法で、複数の角度からアプローチしたテストから得られる定性データにより、デザインの使いやすさを評価し、その課題や要因を特定します。また、そのデータを使いユーザビリティの改善につなげることができます。

定性的データによるテストは、主にUIデザインの最適化を目的として、デザインプロセスの品質管理工程に組み込まれます。

UIデザインについて詳しくは、「UI/UXとは?意味・違い・ユーザー目線のデザインの重要性を解説!」をご覧ください。

定量的データを使ったユーザビリティテスト

定量的データとは、ユーザーにWebサイトなどを使用してもらい、設定した複数の指標(タスク達成率や時間など)を計測した結果をデータにしたものです。

UI/UXの品質を評価する総括的な目的で用いられるテスト手法で、1つ以上の指標から構成された定量データにより、タスクの実行のしやすさなど、ユーザビリティへの認識を可視化し、評価することができます。また、そのデータを使いデザイン改善の効果などを定量的に把握することができます。

定量的データによるテストは、主にUI/UXのデザイン遷移や競合比較のベンチマーク、デザインリニューアルの投資効果ROIを測定するために実施されます。

 

ユーザビリティテストの実践方法

ユーザビリティテストを実施するにはその目的を明確にする必要があります。

その目的を明らかにする工程の中で、テストの進め方、テスト中に注目すべき点など、テストの実施プランを組み立てることができます。

では、ユーザビリティテストの実践方法を順を追って解説します。

1.現状分析:課題を抽出

ユーザビリティテストを実施する目的を明確にするために、まずはWebサイトが抱える課題を洗い出しましょう。

例えば、デザイン、プロセスに変更を加えたなど、エンジニアが気に掛ける部分がある。また、アクセス解析ツールによる現状分析で特徴的な滞留、離脱があるなど。

課題を明らかにすることで、テスト中に注目するポイントやテスト結果からの改善施策が立てやすくなります。

アクセス解析では滞留や離脱の理由は分からないので、ユーザビリティテストによってその原因を明らかにする。このように事前に目的を明確化することが大切です。

2.テスト設計:テスト方法・対象の決定

課題が明らかになったら、その課題の原因・要因を探るようにユーザビリティテストの実施プランを設計しましょう。

ユーザビリティテストには、操作をしながらユーザーに思考を言葉にしてもらう発話思考法、ユーザーの視線を追うアイトラッキング、ユーザーに質問をするなど幾つかの手法があります。

目的に適した手法を選び、テストの流れを想定しながら、テストを通じてチェックしたいポイントを評価対象としてリストアップしていきましょう。さらに、評価対象のリストを元に質問の内容、タイミングなどを設定します。

また、テスト終了後に5段階評価の評価シートを用意することで、コンテンツの内容や使い心地などUI/UXデザインに対する総合的な評価を調査することもできます。

2人でUI/UXを評価している画像

3. テストの実施

ユーザビリティテストの事前準備として、ターゲットユーザーのペルソナに近いテストユーザーを集めます。リサーチ企業ニールセンの研究によればユーザビリティテストにおける最も効率的なサンプル数は5人だとされ、85%の問題が抽出可能としています。テストユーザー数はテストの手法、目的によって変わりますので、計画に応じて人数を調整しましょう。また、テストの際はユーザーが落ち着いてテストに臨めるよう、できるだけ静かな環境を用意すると良いでしょう。

参照:ニールセン ノーマン グループ Nielsen Norman Group 「テストに必要な人数が5人である理由 Why You Only Need to Test with 5 Users」(英文)

ユーザビリティテストは、テストの実施プランに従って進めていきます。

発話思考法であれば、テスト中は実際の思考プロセスなどを把握するために、ユーザーに思考を声に出してもらうといいでしょう。また、適宜、用意した質問を投げかけ、ユーザーの状況、思考を把握するようにしましょう。

テストの中で特徴的な行動があればメモなどに記録し、ユーザーの行動を逐一追っていくようにします。また、設定した評価指標に応じて各タスク完了までの時間計測なども行います。

テストが終わったら、用意した評価シートに回答をもらったり、直接、感想を聞き取ったりすることで総合的な評価を得ることができます。

4.結果分析:改善案策定

ユーザビリティテストの結果は評価対象、項目ごとにまとめていきます。指摘の頻度や問題の深刻度によって課題や問題点の重要度を分類すると良いでしょう。

また、評価シートの5段階評価の回答はグラフやレーダーチャートにまとめると結果を視覚的に把握できるようになります。

テストの結果がまとまったら、課題の優先順位を元に改善案の検討に取り掛かります。

指摘の頻度が多く、問題の要因が明らかな場合はすぐに改善案を立てることが可能ですが、ユーザーごとに評価が大きく異なる項目があることも珍しくありません。この場合には問題の要因やユーザーの特性などを踏まえた問題の深掘りを行うため、チームメンバーが集まり議論をすることで最終的な改善策に収束させるようにしましょう。

改善策が反映されたら、必要に応じて修正後のデザインで再度ユーザビリティテストを実施します。このようにPDCAのサイクルをUI/UXデザインの評価工程に組み込むことでWebサイトのユーザビリティ品質を高めることができます。

 

ユーザビリティテストでわかること

ここまで、ユーザビリティテストの実践方法を見てきましたが、実際にユーザビリティテストを経験しなければ、テストによって何がわかるのか、想像がつかないことがあると思います。

ここでは、ユーザビリティテストでわかることを解説します。

ユーザーの心理

Webサイトの作り手であるエンジニアは数多くのWebサイトに接する機会があります。そのため、製作者と一般ユーザーの間には経験の差による認知の乖離が生まれます。このことから、制作者がユーザー視点に立つことは困難のため、ユーザーの心理を上手く読み解く必要があります。

ユーザビリティテストでは、ターゲットに近いユーザーにテストをしてもらうことによって、ユーザーが「どのような認知を行い、行動をするのか」、「何に関心を持ち、知りたいと思うのか」、「どのような疑問を持ち、不安を感じるのか」などをテストを通じて読み取ることができ、ユーザーが欲しい機能などのニーズを把握することができます。

ユーザビリティテストを実施することで、ユーザー心理を上手く読み解いたサービスを構築できれば、自然とアクセス数は向上するでしょう。

サイトの現状・課題点

ユーザビリティテストでは、テストユーザーが目の前でWebサイトの操作を行います。これによって、制作者の観点では気づけなかったつまずきポイントや、手が止まってしまう操作が明確になり、WebサイトのUI/UXに潜む課題を明らかにすることができます。また、テストによって得られるユーザー心理をまとめることで、コンテンツの俯瞰的な現状・課題を把握することができます。

さらに、ユーザビリティテストは制作チームの成果を測るイベント的な役割を果たします。これによって、ユーザビリティテストで明らかになった問題点や課題を社内で共有でき、進むべき方向の一元化が可能です。そして、制作チームは共通の認識を持ってWebサイトの改善に取り掛かることができるようになります。ユーザビリティテストがチームのコミュニケーションの活性化、チームワークの醸成にも役立つことは特筆すべき点と言えるでしょう。

テスト結果による改善点

ユーザビリティテストでは、得られた結果の分析がとても大切です。

データを評価対象、項目ごとに分類したり、必要に応じて統計的な考察を加えたりしながら、課題の抽出、分析を行い、小さな改善のヒントを見逃さないようにします。

この分析であぶり出した改善点=直すべき部分となります。

分析の結果・改善点は、担当者だけでなく広く社内全体で共有するようにしましょう。改善点を社内共有することで、問題の再発を防ぐとともに、チームとして進むべき方向が分かるようになります。

あとは改善点の解決に向けて修正作業を進めていきますが、改善が確実に盛り込まれるように、進捗や作業の完了をフォローアップするようにします。

 

ユーザビリティテストの成功事例

ここからは、ユーザビリティテストで具体的にどのような改善が行われるのか、成功事例を通して解説します。実際の事例をもとに、効果が出た事例を再編集してご紹介します。

ユーザビリティを改善

成功事例1:新規ユーザーのプラン購入CVが30%アップ

まずは、フィットネスジムの事例を紹介します。

背景

Webサイトの会員登録数と比較して設定したワークアウトプランの購入比率が低いことが気になっていました。そこで、ワークアウトプランの購入促進を図るために、ユーザビリティテストと聞き取り調査を実施しました。

課題と改善点

ユーザビリティテストでユーザーがワークアウトプランをスルーする様子が見てとれました。また、聞き取り調査で、テキスト情報によるワークアウトプランの紹介があるが、その内容がイメージしにくいという指摘がありました。

テストの結果より、ワークアウトプランの紹介にワークアウトのダイジェスト動画を導入しました。

改善効果

この改善により、新規ユーザーのワークアウトプラン購入CVが30%アップしました。

成功事例2:Webサイトからの問い合わせが12%アップ

続いて、不動産会社の事例を紹介します。

背景

Webサイトで物件の情報をこまめに更新しているが、地元情報誌の広告に比べて反応が薄いと感じていました。そこで、Webサイトからの反応を改善するために操作過程を追跡するユーザビリティテストを実施しました。

課題と改善点

ユーザビリティテストの結果、複数のユーザーがテキストの物件リストではなく、まず、マップを開き物件の場所を確認していることがわかりました。

テストの結果より、マップをトップサイトの左に置き、マップのサイズを大きくする改善をしました。

改善効果

この改善により、Webサイトからの問い合わせが12%アップしました。

Webサイトを解析

成功事例3:デリバリーの追跡閲覧率が40%向上

エクスプレスデリバリーサービスの事例を紹介します。

背景

時折、デリバリーの進捗を確認する電話が直接事業所にかかってくることがありました。確認すると、取扱荷物数と比較して荷物の現在地追跡ページの閲覧率が低いことがわかりました。そこで、Webサイトの操作を確認するユーザビリティテストとアンケートを実施しました。

課題と改善点

現在地追跡ページへのリンクが小さく、ページの下方にあったため、ユーザーが現在地追跡ページを開くのに戸惑っていた様子が見て取れました。テスト後のアンケートにも現在地追跡ページの場所がわかりにくいというコメントもありました。

テストの結果より、トップページの上部に荷物の現在地ステータス表示を追加するとともに、配送のスタート、中間、ゴールの各地点で通知を送信する選択ができるようにしました。

改善効果

この改善により、デリバリーの追跡閲覧率が40%向上しました。

デリバリーの画像

 

ユーザビリティテスト まとめ

冒頭でお伝えした通り、ユーザーがストレスなく使えるWebサイトを作るにはユーザビリティテストが欠かせません。そして、ストレスなく使えるWebサイトというのは、商品やサービスを販売する目的を達成するための第一条件と言えるでしょう。

パンタグラフでは、専門家の視点によるWebサイト分析と、効果的なUIデザイン/UXデザインの構築を行っています。もちろん、ユーザビリティテストの効果的な実施方法のサポートもお任せください。

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